PROJECT

特集・プロジェクト

新潟市美術館
大規模改修の舞台裏
~建築・電気・機械 技術職員の挑戦~

新潟市美術館
大規模改修の舞台裏
~建築・電気・機械 技術職員の挑戦~

名建築の「意匠」を現代へアップデート

新潟市美術館は、日本を代表する建築家・前川國男の設計により誕生し、40年にわたり市民に愛されてきた名建築です。しかし、築40年という歳月は建物の老朽化を招き、次世代へ建物を遺すための大規模改修が急務となっていました。
「建物すべてが美術品である」
この確かな共通認識のもと、建設当時の意匠を損なうことなく最新の機能へとアップデートさせるという極めて難易度の高いミッションに、新潟市の「建築・電気・機械」の技術職員たちが挑みました。

意匠を引き継ぎ「質感」を復元する

意匠を引き継ぎ「質感」を復元する

建築担当の最大の使命は、前川國男氏が手掛けた建設当時の意匠を次世代へと引き継ぐことでした。その中で最も苦労したのが、経年劣化した外壁タイルの張り替えです。
単に新しいものにするのではなく、建設当時の「1枚1枚色合いが異なる重厚感」を完璧に継承しなければなりません。
しかし、いざ改修に乗り出すと、当時のタイルの材料であった粘土がすでに生産終了していることが判明しました。そこで他産地の粘土を取り寄せ、温度や釉薬の配合、吹き付け方を微調整しながら何度も「試し焼き」を実施しました。執念とも言える試行錯誤の末、40年前と遜色のない質感と色合いを再現し、歴史ある外観を守り抜きました。

美術品を守り抜く究極の「空気」をつくる

美術品を守り抜く究極の「空気」をつくる

機械担当は、文化財を展示・保存するための「心臓部」である空調・熱源機器の更新を担いました。
美術館の空調には、一定の温湿度、高い空気清浄度、均一な気流分布、さらには空間を正圧に保つといった極めて厳密な環境構築が求められます。さらに今回の改修では、設計時には想定していなかった箇所の劣化や故障が工事中に見つかり、その都度臨機応変に改修範囲を見直すことが必要でした。また、配管の改修工事にあたっては、美術品の大敵である「粉塵」を極力抑えるため、既存のコンクリート躯体を斫って(削って)取り替えることを避け、古い配管の内側に特殊な樹脂をコーティングして新品同様に再生させる「ライニング工法」を採用しました。建物を傷つけず、見えない部分で最新の環境を整備しています。

作品の真の美しさを引き出す「光」

作品の真の美しさを引き出す「光」

電気担当が担うのは、展示室をはじめとした館内照明のLED化です。新潟市美術館には数多くの貴重な作品が所蔵されており、単なる省エネ目的ではなく、展示物を正確に、そして美しく見せるための「光環境(明るさ、演色性、均一さ)」を作り上げることが最大のミッションでした。
築40年ゆえに、図面などの設計時の想定とは異なる現場状況や、既存器具の想定以上の劣化が多数見受けられましたが、作家が込めた色彩を忠実に再現できる、光の空間を作り上げました。

常に発生し続ける「課題」

常に発生し続ける「課題」

公共施設の建設や改修において、工事を進めるために建築・電気・機械の3者の連携は欠かせません。しかし、今回のプロジェクトで求められた連携力は、これまで以上に難しいものでした。なぜなら、「建物すべてが美術品」だからです。
通常であれば難なく配管や配線を隠せる場所でも、前川建築の計算し尽くされた空間において、最新の巨大な空調機をどう収めるか、そこにどうやって新たな電源を引くか、という難題をクリアしなければならないのです。
それぞれの専門分野が「守るべき意匠」と「更新すべき機能」が複雑に絡み合い、少しでも認識のズレが起こるとプロジェクトが行き詰まってしまうような高いハードルが、現場では発生し続けていました。

職種の壁を越えた「ワンチーム」

職種の壁を越えた「ワンチーム」

決して妥協せず、すべての条件をクリアする最適解を見つけ出す。
この難題を突破できた最大の要因は、彼らが皆、同じ「新潟市職員」であり、職場の中に何でも言い合える風土が根付いていたことにあります。
建築、電気、機械の専門家が日常的に顔を突き合わせて連携できるのは、新潟市ならではの強みです。そこに職種の壁はなく、自分たちの街の宝を次世代へ残すという揺るぎない共通目的を持った仲間として、議論を重ねていきました。
現場では、それぞれの専門知識への深いリスペクトをもとに、美術館の学芸員や施工業者も交えながら、作品をどう美しく見せるか、意匠をどう守るかを徹底的に議論しました。
全員が同じゴールに向かって力を結集したからこそ、歴史的価値と最新機能の完全な両立が実現したのです。

若手技術者としてのステップアップ

今回の美術館改修のプロジェクトは、若手技術職員にとっても大きな成長の舞台となりました。
建築担当は、効率やコストが重視される一般的な改修とは異なり、意匠を守りながら「次の10年を見据えて建築の価値を高める」という長期的な視点を養いました。
初めて文化財施設を扱った機械担当は、関係者との連携の中で、美術品を守るための「精度の高い空調環境を実現するノウハウ」を習得することができました。
電気担当も、関係各所との緻密な調整を通じ、照明の更新を単なる設備の更新ではなく「作品や建築の価値を引き出す空間づくり」として捉え直しています。

40年の時を経て深みを増す美術館

40年の時を経て深みを増す美術館

数々の困難を乗り越え、ついに迎えたリニューアルオープンの日。
柔らかな光に包まれた展示室で、熱心に作品に見入る多くの市民の姿を見たとき、職員たちはこれまでの苦労が報われるような大きな達成感を抱きました。
関係者からかけられた「40年が経過し、周辺の公園の樹木も成長して、建物の味も出てきた」という言葉。そして利用者からの「展示室や展示品が本当にきれいに見える」という喜びの声は、裏方として都市を支える技術職にとって最高の勲章となりました。

MESSAGE

新潟市職員を目指すあなたへ

新潟市の技術職が担うのは、単なる建物の維持管理ではありません。
それは、美術館のような文化財から日常を支える公共施設まで、この街の風景そのものをつくり、守り抜くことです。
前例にとらわれず、「市民の財産を未来へ残す」という純粋な使命感のもと、プロジェクトの最上流から街づくりを牽引する。それは、自治体の技術職だからこそ味わえる圧倒的なスケールと誇りです。
先人たちが遺したバトンを受け取り、あなたの手で最高の状態へとアップデートして、次の世代へ手渡していく。あなたの技術を、この街の「歴史の一部」にする仕事がここにあります。
私たちと共に、新潟市の未来をデザインしませんか。

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